HOME >> 中国感染症情報 > 中国のエボラ対応

西アフリカにおけるエボラ出血熱に対する中国の対応

1955年のバンドン会議(アジア・アフリカ会議)以来、中国は第三世界のリーダーとしてアフリカへの援助を拡大し、国際社会における発信力の向上を図った。中国の対外援助の特徴として「対口(たいこう)支援」という形がある。特定の国・地域に対して中国の一つの省や市を対応させ、一貫した援助を続ける支援形式である。現在、エボラ出血熱流行が問題になっている西アフリカ3か国については、北京市―ギニア、湖南省―シエラレオネ、黒竜江省―リベリアという支援の形がすでにできあがっていたため、今回の対応も迅速に行われたといえる。西アフリカにおいてエボラ出血熱の流行が発生して以来、中国から115名の医療従事者が派遣された。そのうち長期の医療隊が88名、短期専門家が27人である。9月16日、中国CDC移動実験室検測隊59名がシエラレオネへ派遣され、派遣総数は174名となった。この検測隊には、東京大学医科学研究所中国拠点のカウンターパートである高福(George Fu Gao)中国科学院院士、中国CDC副センター長が主要メンバーとして参加している。

T.インターネットなどメディアに基づく情報

中国政府は1968年からギニア、1973年からシエラレオネ、1984年からリベリアへそれぞれ医療援助隊を派遣してきた。上記3か国にはそれぞれ北京市、湖南省、黒竜江省が中心となり、継続的に医療団を派遣している。
北京市からギニアへの医療隊については第23次医療隊18名(19名という記事も有り)が8月29日に帰国した。これは主に北京市の安貞医院に所属する医療従事者であった。8月14日にはギニアへの第24次医療隊が出発。うち22名の専門家は北京地壇医院、友誼医院など北京の各大病院からの派遣である。
湖南省は1973年シエラレオネに第一次医療援助隊を組織してから、2013年4月までに計16次、延べ202人を派遣しており、第16次医療隊は10名の医療従事者が参加、うち9名の医師は湖南省岳陽市の三級医院から派遣されている。
黒竜江省から現在リベリアに駐在している第5次医療隊は内科、外科、眼科、中国医学科などの専門家9名から構成されている。またリベリアには黒竜江省からの医療隊の他に、今年3月より山西省の解放軍264医院の医療従事者43名が治療にあたっている。
医療従事者以外に、8月中旬、公衆衛生の第一次専門家団がギニアへ派遣された。北京地壇医院伝染病専門家・李鑫、北京協和医院重症医学専門家・隆雲、中国CDC伝染病研究所専門家・楊鵬の3名で、9月16日帰国した。北京地壇医院伝染病専門家・王凌航など第二次隊員が9月19日にギニアへ向け出発した。
湖南省からシエラレオネに派遣された3名の専門家は8月16日に現地に到着した。第一次派遣隊の専門家は、中南大学湘雅医院重症医学科専門家・徐道妙、同医院感染性疾患科専門家・沙新平、長沙市CDC公衆衛生専門家・張恒である。3人は援助物資の分配、現地専門家へのトレーニングなどを行っている。
医療団派遣とともに中国政府は大規模な物資援助も行っている。今年4月にはギニア、シエラレオネ、リベリア、ギニアビサウの四か国に対し、それぞれ100万元の援助物資を提供した。8月13日には緊急人道援助として3000万元(約5億円相当)の物資をギニア、シエラレオネ、リベリアに提供した。8月の援助の主な内容は防護、食料などの物資、医療専門家の派遣、生物実験室などの緊急救護設備・施設などである。9月12日、中国政府はさらに総額2億元の緊急人道援助を行うことを決定した。
9月16日に出発した中国CDC移動実験室検測隊59名は、ウイルス検査を担う中国CDCの専門家と、中国人民解放軍第302医院から選抜された援助医療隊により構成されている。302医院感染性疾病診療・研究センターの秦恩強副主任をリーダーとする医療隊30名は、観察期間中の患者を看護、観察する役割を担う。これに先立つ8月、中国CDCはフランスのパスツール研究所との共同研究を通じてRT-PCR、colloidal gold-based immunochromatographic assay(CGIA)、ELISAなどを用いた数種の検査キットを完成させており、検測隊がシエラレオネで使用する模様である。

U.北京協和医院からの情報

8月13日の時点で、西アフリカ現地派遣(場所不特定)の中国人医師7名、看護師1名が現在隔離観察中(今後2週間)と各メディアによる報道あり。彼らが協力していた病棟にて死亡患者が発生した為の観察処置との事で、中国からの派遣者の感染は確認されていない。派遣された理由は、西アフリカには中国人技術者(経済・開発協力)が多数在中しているものの、中国語を話せる医師が少ない等の理由で常駐していた医師団ということである。どの病院から派遣されたかは不明である。
8月19日の時点で、衛生部が医療援助チームを西アフリカへ派遣することを決定した。北京市で第1派遣隊として協和病院と佑安病院のチーム、第2番手は北京大学附属第一病院と同附属人民病院のチーム、第3番手は北京大学附属第三病院と地壇病院のチーム、第4番は北京友誼病院のチームで、一ヶ月ごとに交代する予定である。
北京協和病院は、ICUとERから2名の医師、3名の看護師を派遣することを決め、9月初旬に出発した。佑安病院からは感染症内科から2名の医師、3名の看護師が派遣される予定である。
ページトップへ
ホーム生物物理研究所微生物研究所ハルビン獣医研究所中国南部との連携